テンプラーナ早期介入療法 「リフレクソロジーを用いた障がい児へのアプローチ 中東オマーンからの報告」 Temprana Reflex Therapy

デンマークのリフレクソロジー「ソレンセン式神経反射療法」の日本校

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神経反射療法 (リフレクソロジー) を用いた障がい児へのアプローチ
デンマーク発ソレンセン式 テンプラーナ早期介入療法(養育者コース)
~中東オマーンからの報告~
株式会社フェイシャルリフレクソロジージャパン 代表 五十嵐桂子

 

2013年3月末、中東オマーンを初めて訪れることになりました。この地で開講された反射学の興味深いコースに、技術指導者のひとりとして参加するためです。そのコースは、障がい児を家族に持つ、または障がい児を養育する立場にある両親や家族、養育者に向けられたもの。養育者を教育し、彼らに技術訓練を施すことで、時に外出も困難な障がい児へのホームケア及びセラピーを彼らが日々暮らしの中で実践できるよう育成する、という趣旨のプログラムです。

 

  • ロネ・ソレンセン

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今回のコースを主催し、現場の指導総監督にあたるのは、スペイン・バルセロナに拠点を置くデンマーク人女性リフレクソロジスト、ロネ・ソレンセン。ロネ・ソレンセンの祖国デンマークはリフレクソロジー大国として知られ、リフレクソロジーが医療の現場(小児科や産婦人科など)にも積極的に導入されています。

そのため、デンマークでリフレクソロジストとなるためには大変厳しいカリキュラムの受講と資格取得が義務付けられており、生徒は最低でもおよそ2年半の月日をかけて、解剖生理学を始めとした理論と技術を学ぶことが課せられています。

そんな祖国デンマークで長年リフレクソロジストとして活躍したロネ・ソレンセンは、東洋医学を基盤とした顔への反射学「フェイシャルリフレクソロジー」を初めとした理論と手技の創始者として現在は国内外を飛び回り、それらの資格取得コースを世界25ヵ国で開講しています。

私はそんなロネの日本におけるインストラクター及び通訳を務めて11年となります。

ロネ・ソレンセンは、自身が障がいを抱えた息子を養育している背景もあり、プロとして世界各地で活動していく中で「反射学を用いて、障がいを抱えた子供たちのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を向上できないだろうか」と考え、それを生涯のテーマとしたそうです。顔は足と比べて位置的にも脳に最も近いことから、ほとんど妨げがなく瞬時に刺激が脳へ伝達されるということもあり、足や手のみに行うリフレクソロジーでは見られなかったような改善例が様々にみられることでフェイシャルリフレクソロジーは広がっていきました。

障がい児へのアプローチでも同様の改善が見られたことから、コース開講が様々な国と地域で待たれています。日本もそのひとつです。

 

  • 総合反射療法 「テンプラーナ早期介入療法」

障がい児にリフレクソロジーでアプローチする場合、ロネによると「顔」「手」「足」という3つの部位にリフレクソロジーを用いることが大変肝要であるそうです。顔には「フェイシャルリフレクソロジー」、足には神経末梢反射区を刺激する「ニューロフットリフレクソロジー」、手には手の縮小経絡反射区やアジア諸国の反射療法を融合させた「ニューロハンドリフレクソロジー」、この3つのロネが体系立てた手技を用いて、顔・手・足3方向からアプローチしていくという手法=総合反射療法をとります。

この総合反射療法をロネは 「テンプラーナ早期介入療法」 と名付けており、今回オマーンで開催された養育者向けのコースでは、その簡易版を学ぶことができるコースとなっています。

簡易版のメリットは、手技を短時間で行うことができる為家庭で毎日継続して行うセラピーとして現実性と実用性があること、理論よりも手技にフォーカスして学ぶことができるので短時間で履修カリキュラムを組むことができ、受講料他で家族への負担を最小限に留めることができることがあります。

 

  • きっかけは、世界自閉症シンポジウム

ロネ・ソレンセンは2010年5月に中東ドバイで行われた「世界自閉症シンポジウム‐Autism Around The World Symposium」へ招致され、セミナーを行った経験があります。

このシンポジウムは、国際的に著名な教授陣や専門家を世界中から招致し、自閉症と生きる子ども/成人の養育者なども交え、最新の研究や、早期介入治療領域における技術発展、教育、行動療法、言語行動によるコミュニケーション、食餌・栄養、感覚間統合・・・etc、あらゆる重要課題について議論し、対策を見出していくことを目的としたものでした。

招致されたゲストスピーカーは、ABA(Applied Behavioral Annalists-「問題となる態度を分析しそれに対する知識、または、技術を与える」という教育方法)の教授、この分野では最先端と言われるカリフォルニアにある自閉症研究所の所長、栄養士、ソーシャルケアのエキスパート・・・など、医療・科学の学術的なバックグラウンドを持つ専門性の高い研究者や学者ばかりだったそうです。

ロネ・ソレンセンはそんな中で唯一の補完療法士、セラピストの代表でした。

その際ロネのスピーチを聞いたUAEの隣国・オマーンの厚生省外郭団体からオファーがあり、ロネ・ソレンセンのオマーンでの活動がスタートしたのだそうです。

 

  • オマーンはどんな国?

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なぜオマーンでペアレンツコース開講なのか、ということをご紹介する前に、まず日本人にとっては少々遠い国オマーンについて、簡単にご紹介したいと思います。

中東にあるオマーン国は人口280万人(うち30%は外国人)、面積は日本の約3/4です。公用語はアラビア語ですが、英語も広く通用します。アラビア半島の南東部に位置し、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、イエメンと国境を隣接しており、首都のマスカットは、政治、経済、文化、教育の中心となっています。

1970年に現在のカブース国王が即位してからオマーンでは国の近代化が進み悪習を絶つことに力を入れていたそうで、現在では世界で最も治安の良い国の一つに挙げられているそうです。

他のアラブ諸国と比べるとかなり女性の自由もあり、女性だけのグループが夜食事に出かけているのもよく目にしました。石油や天然ガスも出ることから、国が豊かで税金もなく、飛行機のサーチャージも取られず、ガソリンもレギュラー1Lあたり28円と日本では考えられない値段でした。

教育にも力を入れているオマーンでは、日本と同じ小学校6年、中学校3年、高校3年、大学4年の制度となっており、公立だと高校まで無料で成績が良ければ大学も無料なのだそうです。ゆえに大学進学率はほぼ100%と教育レベルもかなり高いそうです。

ちなみにオマーンでは男女共に25歳になると国から土地がもらえるそうです。すごいですよね!

 

  • オマーンで 「ペアレンツコース」 が必要とされるわけ

安全な国、近代国家として知られるオマーンですが、純血を守るという風習も未だ根強く残り、近親婚も続いているそうです。それ故か、生まれつきの障がいをもった子供が生まれるケースが多いそうです。最近は子供の数も少し減ってきているとはいえ、それでも一家族に子供が6~20名、そのうち2~3名障がいを抱えた子供のいる家庭もあるそうです。

オマーンの厚生省外郭団体からオファーを受けたロネ・ソレンセンは、この国こそ障がいを抱えた子供の養育者指導「ペアレンツコース」が必要な国であると考え、オマーンでの活動をスタートさせました。

豊かな国とはいえ、貧困層や砂漠に住むベドウィンなどコースが受けられない人たちの為にロネ・ソレンセンは厚生省、ガス会社、石油会社に働きかけ、資金援助が受けられるようにしているそうです。ただし人数が限られていることや審査他手続きが難しいため、実際にはロネ・ソレンセンの協会からも資金援助をしているそうです。最近では、在オマーン・スペイン大使からのお墨付き文書も頂けるようになったので少し公的手続きはスムーズになったのだとか。

現在、ロネ・ソレンセンのオマーンにおける活動で現地オーガナイザーを務めるのは、アイーシャという女性。彼女はドバイの「世界自閉症シンポジウム」に出席し、脳炎の後遺症に苦しむ8歳のお子さんのために以前このペアレンツコースを受講された方です。

彼女の息子さんは8歳で文字がまだ書けずまた癲癇の発作をかかえていたのですが、ペアレンツコースを彼女が受け自宅でホームケアを続けたところ3週間後には文字が書けるようになり癲癇の発作も減ってきたそうです。

お子さんの変化に感動したアイーシャは、現在ロネのオマーンでの活動をサポートするべく政府機関や各種団体との橋渡しを行っているとのこと。

ちなみにお子さんの癲癇の発作は現在全く出ていないそうです。

 

  • ソレンセン式ペアレンツコースの概要

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ペアレンツコースの受講希望者は、ロネによるコース受講事前コンサルテーションを受けることになっています。その後、1回8時間×3日間のコースを受講し、受講終了後3か月経過したところで、ロネによるフォローアップを受けることとなっています。

セラピストとしてクライアントを対象に外で活動していくプロ志望の受講者を教育するプログラムではなく、あくまでも家族(素人)が家族のために行うものなので、プロが学び、行うものとはかける時間も内容も異なります。

ペアレンツコースのホームケア所要時間は毎日30分から1時間。発達障害、運動機能障害、言語障害、聴覚障害、視覚障害、多動、行動障害、自閉症、学習障害、ADHD・・・など脳の機能低下に関連している分野や臓器の機能低下などに多く症例を持っています。

今回オマーンで開催されたペアレンツコースは、現地で受講者を募集する傍ら、私自身含め世界25ヵ国にいるロネのオーガナイザーやインストラクター、こうしたコースに興味のある過去の卒業生に広く声がかかりました。私たちに声がかかった目的はひとつ。ペアレンツコース受講者の実技指導にロネ総監督の元、実際指導員として参加してみないか、ということです。

自然療法士による障がい児へのアプローチ及び障がい児を持つ家族や養育者に対するアプローチは、まだまだ道が開けていない現状もあり、それをよく知っているロネが、今一番ペアレンツコースを頻度高く開講し、また最も需要が高まってきている国オマーンで、現状を知り実際の指導にあたることのできる貴重な機会を自分のインストラクターや卒業生たちにぜひ体験させ、未来につなげてほしいと企画したのです。

ロネの呼びかけに応じ今回集まったのは、デンマーク、スウェーデン、ポーランドそして日本から合計7名のインストラクター及びセラピスト。その内「テンプラーナ早期介入療法」を受講済みの人間は私を含めて3名、残り2名はペアレンツコース受講済み、2名は熟練のフェイシャルリフレクソロジストたちでした。

一日の流れは、朝9時から午後1時までが午前のセッション、午後4時から8時までが午後のセッションとなっています。3日間で行ったケースは、20ケース。つまり、延べ20家族が参加したことになります。これは、3日連続で基本コースに通う方もいれば、「3日はとても出られない」ということで、一日・・・午前か午後のセッションのみ、という方も。

今回オマーンで指導を実際行うにあたって、ロネが作成した参加者募集要項には「自主性をもって臨機応変に立ち回れる人」とありました。確かに・・・と思うくらいドタキャン&アポなしで訪れる参加者が多かったです!! どこの国・現場でも多少あるかもしれませんが、こちらではペースや感覚が我々とは異なり予定通りに事が進まなくても焦らず相手のペースに合わせながらでも仕上げていくことが求められます。

また、イスラムの国なので日に5回お祈りの時間というものもあります。コース中でもお祈りの時間になると休憩が入り、その後ランチ休憩で午後またお祈りと何度も長い休憩が入るので、日本やデンマークなどでコースを行うのとはコースに使える時間が全く異なりました。

連日「どうしてもロネの今回の滞在中にペアレンツコースを受けたい」という方々が表れ、それに対して予定表を練り直してできるだけ対応するようロネとアシスタントでありスペインのインストラクターでもあるカルメンが人繰りと施術部屋のやりくりをしていました。幸い今回の参加者はベテラン勢ばかりなので割と混乱もなく順調に進みました。

ほとんどのケースが、事前にプレコンサルテーションが終わっているのでロネの方で妊娠中や出産時の様子、自然分娩なのか帝王切開なのか、分娩時間の長さ、など出産時の様子から始まり、その後の既往歴や現在何ができて何ができないかなど細かな聞き取りがされていました。また、病院からの診断書も提示してもらい、そちらも合わせて確認します。

プレコンサルテーションでは聞き取りの他にも、実際に顔の反射区を触り確認することで身体の弱まりの原因がどこから来ているのか確認します。それらを基に、コース初日には当日使うトリートメントプランが出来上がっており、それに応じでコースを進めて行きます。

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  • ペアレンツコース症例①:モハメッド、4歳の男の子

プレコンサルテーション①聞き取りと診断書からの情報:

若いご両親のもと6人姉弟の下から2番目として生まれた。32週で早産により体重1,760gで生まれる。小児十二指腸閉鎖症で生後7日目に手術。生後から黄疸が強く出ていたことに気がついた母親が担当医師に訴えたが問題ないと言われ、その後、他の病院で調べたらビリルビン値が異常に高かったことが分かったがその時点で処置を施すにはもう遅すぎた。

モハメッドの場合、そのほかに出産時の低酸素状態が続いたことにより運動障害脳性麻痺となった。これにより、座る、立つ、歩く、話すことができない。

プレコンサルテーション②顔と足の反射区からの情報:

顔:一番の弱まりが胃の反射区にみられた。(ソレンセン式フェイシャルリフレクソロジーではこれを脳の前頭葉にも関連しているとも捉える。前頭葉は運動機能や言語、知能、感情を司る。)
足:脳の側頭葉と脳幹、そして胸椎4-5、9-11に滞りがみられた。

コース初日:

考察:4歳にして手足が細く身体の自由があまり利かないので起き上がることができず、眼も両目共に外斜視でそれぞれにかなり外側を向いている。表情も乏しく反応も少ない。話すことも出来ず、たまに音だけ出せる状態。

  • 初日のプログラムはフェイシャルリフレクソロジー

本来このコースではコースを学ばれる家族や近しい人2名とコース中に子供の世話をしてくれる同行者1名で来るのですが、オマーンは何故か大人数で来ることが多いそうで、モハメッドの家族もお父さん、お母さん、姉弟5名の総勢8名でやってきました。実際に毎日ホームケアを行っていくのは、お父さん、お母さんと14歳の長女。他の小さな姉弟たちは長時間辛抱強く同席していました。

ペアレンツコースでの顔のトリートメント工程は症状によっても異なりますが7~8ステップほどあります。

各ステップではゾーンを左右に引き伸ばし、ツボを回転させながら刺激していきます。家庭で行うにあたって覚えやすいように、そのほとんどを「8回引き伸ばす」とか「8回回す」というように回数を決めて伝えながら行っていきます。

小さな兄弟も同席しているので担当セラピストが楽しげに声を出して回数を数え「ワ~ン、ツ~、スリ~・・・」と行っていくと、最後の「エ~イト」の頃にはお父さんもお母さんも姉弟たちも同行者みんなで声を出して数えていました。

今まで顔のマッサージやツボ押しなど全くしたことのない人たちに覚えてもらうために、こうした工夫が随所に見られるのもこのコースの特徴です。

1つのステップをセラピストが行ったら、次は学びに来た家族が行ってみるというように交互に行い、また圧の強さや角度などを知ってもらうために、ご家族の方にもステップごとに実際の施術を受けていただきながら行います。

こうして、ランチ休憩やお祈り休憩を入れながら1日目が終了しました。そして、一日終わるころには家族の数える声に、クライアントのモハメッドが少し反応を見せるようになったのです! そして、最後の数の「エ~イト」を皆が声を揃えて言うと小さな笑顔を見せてくれました! これには家族も我々セラピストもびっくりし、目の前に起きた刻々と起きる変化に感動しました。

コース2日目:

  • 2日目は、足のニューロフットリフレクソロジー
    この日も朝から家族全員でやってきました。ロネ・ソレンセンの教える反射学のほとんどが東洋医学を基盤としていますので、各反射区も経絡別に捉えていきます。そしてそれらの細かい反射区ごとに左右交互で足をトリートメントしていきます。

初日は大人しかった姉弟たちも2日目にしてだんだん慣れてきて退屈していたので、この日は姉弟たちの足を使って練習することにしました。実際に行うモハメッドの足は1歳児の弟とあまり変わらないくらい小さな足だったので、まずは12歳の兄の大きな足を借りて確認しやすい状態でデモンストレーションを行います。その後モハメッドを真ん中にして姉弟が左右に寝て、その足でご両親とお姉さんが練習しました。1つのベッドで大小の足が並んでリフレクソロジーを受けている様は見ていてとても微笑ましかったです!

この日も前日に引き続きみんなで数を数えながらコースを進めていきました。やはり毎回「エ~イト」とみんなで数えるとモハメッドが笑い、それも前日ははにかむような笑顔を見せただけだったのが、だんだんと声を出して笑うようにもなりました。

またまた前進! 家族もとても嬉しそうです。表情や顔つきも2日目にして少しですがより意識がはっきりしているように見え、途中で様子を見に来たロネも「変化が表れ始めているわネ!」と言っていました。

コース最終目:

  • 3日目は、手のニューロハンドリフレクソロジー

この日は最終日ということもあり、ご両親もすべて覚えて終えられるかどうか不安な様子で、兄弟をホテルに残しご夫婦二人でやってきました。

お父さんが朝一番で私たちに見せてくれたのはモハメッドの眼の動きの変化です。いきなりモハメッドの片目を隠すともう一つの眼がしっかりとものを見ていました。反対側の眼を隠しても同じようにそちらの眼がものをしっかりと捉えていました!! コース受講中この様に様々な変化が次々に見られ、ご両親も本当に嬉しそうでしたし、我々もクライアントとご家族を見て喜びを感じながら、セラピストとしての手ごたえも同時に感じました。

ペアレンツコースで行うハンドの手技は、シンプルなゾーン刺激のみなので最終日で頭が疲れきっていても覚えられやすくなっています。手の手技がすべて終わったところで、3日分の総復習を行いました。その後、全工程をモハメッドに施術したところをビデオ撮影しその動画をご両親へお渡ししました。我々セラピストでも新しい手技を学ぶと慣れるまで苦労しますが、全く初めて行うご家族が自宅に帰っても迷わずできるようUSBに落としてそれをお渡ししています。

 

  • ペアレンツコース症例:ナセール、14歳の男の子

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プレコンサルテーション ① 聞き取りと診断書からの情報:

3人兄弟の末っ子として生まれた。妊娠初期に6日間抗生剤を服用。分娩は24時間かかり生まれたときは身体が青く、2分間呼吸が停止していた。

生後3か月以降、喘息の症状が出始め3週間抗生剤を服用。その後は順調に成長しハイハイも出来、その後歩き始めた。

8ヵ月の時に世話をしていた祖母が朝の入浴後ナセールの身体が少しの間力が入らなくなるのに気付き、観察してみるとそれは毎日続いていた。

9ヵ月の時に10分間続く重度の癲癇発作が起こり、それ以降抗癲癇薬を服用し始め4歳まで続けた。

14ヵ月の時に風疹にかかり高熱が6日間続いた。

自閉症と診断され現在特別養護学校へ通っている。
症状:アイコンタクトがない、多動、攻撃的な行動が見られる、知的障がい、言語遅延、手の同じ動きを繰り返す、集中力や記憶力に問題があり学習障がい、触られるのが苦手、食欲旺盛しかし満腹感を感じられない、泳ぐのは大好きだが泳ぐときには水着を着用せず全裸になってしまう。

 

プレコンサルテーション② 顔と足の反射区からの情報: 

顔:触られるのを極度に嫌がるため反射区を確認することは出来なかった。 

足:脳の反射区(前頭葉、頭頂葉、脳幹がとても硬かった) 胃と脾臓、そしてその次に大腸の反射区にディポジットを確認、 胸椎9-11に滞りがみられた。

 

コース:ナセールのご両親は今年1月初旬にコースを受け、今回はフォローアップとしてコース期間中に参加。

 

経過報告:

受講後1ヵ月後の2月には行動、アイコンタクト、言語、社会性に大きな変化が見えてきたと母親から報告。その際に重金属蓄積に関する血液検査を受けた結果、鉛と亜鉛の蓄積が高かったが水銀は基準値内とのこと。

3月22日にフォローアップを行ったところナセールは落ち着いていた。椅子に長く座っていられるようになり、多動はかなり落ち着いてきた。

アイコンタクトを保つことは出来なかったが短時間数回アイコンタクトがあった。手や腕をあまり動かさなくなった。話しかけられた時の反応が改善されてきた。

ナセールはロネとカルメンのことを覚えていた。このフォローアップではカルメンが15分間のニューロハンドを行い、父親も頭蓋のアプローチに時間をかけて行うことができた。

ナセールは頭蓋へのアプローチが気に入り父親に続けて欲しがった。

今回のコース期間中にもう一度フォローアップを受けに来て、その際にナセールはとても落ち着いて、顔、足、手のトリートメントを受けることができていました。初回からたった3ヵ月しか経過していませんが、その3ヵ月の間に大きな違いが見られ、両親と共に我々もこの変化に喜びました。

両親の手技も確認したところ問題なくしっかりと習得できていました。

こうして3日間のペアレンツコースが終了しました。今回のコースには自閉症や行動障害のお子さんを持つ養育者が多く参加しましたが、そのほかにも多発性硬化症、事故の後遺症、知的障がい、多動、視覚障がいなど様々なケースが見られました。色々なスタイルはあれどコースに参加した延べ20組の家族に対しては、3ヵ月後にそれぞれフォローアップが予定されており、変化や状態を確認しトリートメントプランの見直しを行います。

今後も変化を追って、ブログやソレンセン式フェイシャルリフレクソロジーのFacebook他で経過を随時報告していきたいと考えています。

 

  • マスカット盲学校への訪問

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3日間のペアレンツコースが終了した翌日は、今回集まった参加者皆でマスカット市内にある盲学校を訪問しました。この学校には視力が弱い子から全盲の子まで通っているそうです。限られた時間の中、出来ることをお伝えしようということで“ミニペアレンツコース”を行う目的で行きました。

ロネから視覚機能が100%失われている場合は何もできないのでそれ以外の状態の子を、と学校側にお伝えしたところ2名が選ばれ、保健室でその子たちのお母さんたちに顔と手のテクニックを教えました。

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一人は小学生の女の子。白血病で脾臓の摘出手術を受けた際、術中に脳梗塞をおこし、運動機能と視覚に問題がでたという小学生でした。運動機能を司る前頭葉や視覚を司る後頭葉をターゲットにいれ施術ブランが立てられ、それらを顔と手のプラン加えて行っていきました。

通訳をしてくれる盲学校の先生も同席しましたが、その先生が他の親子についている時には英語が話せずセラピストの英語の説明が上手く理解できないお母さんのために女の子自身がお母さんに英語を訳していました。

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もう一人は21歳の男の子。15歳までは普通にスポーツをしていたそうですが、その後バランス感覚がおかしくなり運動機能が徐々に低下し、現在は車椅子で生活。弱視にもなっているという脊髄小脳変性症の男の子でした。

保健室の先生が「この子と同じ病気に関して日本の動画があるけれど知っていますか?」とYouTubeの動画を見せてくれました。それは日本のドラマ「1リットルの涙」を多分中国の人が見てそれを約7分程度のダイジェスト版にし、英語のテロップをいれたものでした。

オマーンで日本のドラマを見ることになり不思議な感じでしたが、とても分かりやすく、その先生によると最初はこの男の子の病気がどんなものかわからなかったけれど、この動画を見てやっと理解できたのだと言っていました。

両方のお母さんたちは熱心に技術を学んでいました。今回もロネと私で全工程を録画し、それをUSBに落としてお母さんたちに自宅で見ながら行えるようにお渡ししました。この2組のご家族にも3ヵ月後フォローアップを行っていくようになっています。

 

  • オマーン国立がん協会でのカンファレンス

盲学校へ訪問した同日夕方は、オマーン国立がん協会のカンファレンスに行きました。フェイシャルリフレクソロジーでがんの症例が多いことから依頼を受け、ロネが「がんに対する補完療法:フェイシャルリフレクソロジー」というスピーチを行い我々も同行させてもらいました。

同行したセラピストの中にもがんの症例を持つものが何人もいたのでロネからの紹介があり、少しですが私も他のセラピストと共に自分のクライアントで経験した、肝がんや子宮頸がんのケースについて話をさせていただきました。

フェイシャルリフレクソロジーの症例では、抗がん剤治療をしながらフェイシャルリフレクソロジーを受けたケースや化学療法を全く受けずにフェイシャルリフレクソロジーのみのケースも多数あり、それらの症例を聞くと会場から質問が上がっていました。

ロネが200名の乳がんの女性に対してフェイシャルリフレクソロジーのトリートメントを定期的にしたところ、抗がん剤治療を受けた時にも髪の毛が抜けない、吐き気が起きないなどといった良い反応が多く見られたそうです。

ロネは自分自身も以前にがんを2度ほど患ったことを話し、一度目はまだ子供が小さかったのでなんとか生きなくてはと治療を受けたがその後の状態は辛いもので、2度目になった時は、治療を受けずにフェイシャルリフレクソロジーを毎日受け続けがんと闘ったと語りました。

それ以降10年以上経つがその後はがんにかかっていないことを告げ、いかにこのような補完療法が大切なのかその重要性を身をもって知っていると続けていました。

オマーンでの活動を始めてまだ2年ということもあり、スクールやセラピールームといった施設を設立させずに定期的にオマーンを訪れて活動をしているロネですが、カンファレンスの参加者や主催の協会からは是非1日も早くオマーンにインスティテュートを設立させてほしいと熱いラブコールを受けていました。

 

  • 最終日

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最終日は参加者全員で、今回オマーンで体験したことについてシェアリングとフィードバックが行われました。そこでロネは、「この分野、特にペアレンツコースに携わるには覚悟がいる。全てに効くものではない。けれど、実際に目覚ましい変化を見ることができるケースも多いことを皆理解したはずだ。クライアントをしっかりと見極め、覚悟をもってプロとして自分の出来ることをすること!」と結びました。毎年来日コースでのロネの言葉を聞き続け、通訳もしてきましたが、現場でのロネの言葉はとても熱く皆の心に響きました。

 

  • 最後に

私がセラピストとなるきっかけを与えてくれたのが、ロネ・ソレンセンでした。彼女との出逢いを経てから11年。この指を使って触れるだけで起きる小さな奇跡を見ては感動し、クライアントに起きるからだと心の変化に喜びを分けてもらってきました。

今回、障がいを持ったお子さんと、そのご両親やご家族に、インストラクターとして触れる機会を得たことは講師としてもセラピストとしてもとても大きな体験となりました。指導する直接のクライアントは実際問題や痛みを抱えた子どもではなく、その家族。家族の技術指導を行う、という大きな責任の下、立ち止まって考えることも多かったように思いますし、確かな収穫を得て帰国しました。

帰国後、今回のペアレンツコースに基づき、この日本でも2013年10月に講座を行いました。「障がいを抱える子供の養育者指導ペアレンツコース」という名の下行う、ソレンセン式認定コースの中でもプロセラピスト向けのアドバンスコースです。トリートメントを必要としている人が毎日一番身近で、彼/彼女を誰よりも愛する家族からセラピーを受けられるように、そのサポートにあたるセラピストを育成するコースです。

決して易しいコースではありませんが、セラピストにとってやりがいのあるものとなっています。日本での2013年度のコースでは、受講されたセラピストが自閉症のお子さんとご主人と共に参加され、その後の変化などもシェアしてくださいました。

ロネ・ソレンセンの活動が他のアラブ諸国でも注目されており2014年5月にはカタール国王との謁見も実現され今後更なる国々でこの療法が導入されていく予定です。日本ではまだまだ自然療法や補完療法の可能性について発展途上にある部分は否めませんが、世界では様々な動きが前進しています。

補完療法を本当に必要としている人は誰なのか。その人たちに自分はセラピストとして何ができるのか。これから私自身もより深く考えていきたいと思います。